Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
三
「小癪な女め、蟷螂の斧だ」
と一人が懐剣の下を潜ってその手を捻じ上げた。するとその時、横合からずんと繰りだした笹穂の槍尖が、その男の脾臓を咄嗟に突きえぐってしまった。
「うわッ!」
と倒れる肩先へ千浪も逆手の懐剣をふり下ろしたが、繰り出た槍の手元へふと眼をやって、思わず、
「おお!」
とその人へ抱きついて行った。
三
見事、一人が田楽刺しにたおされた愕きに、どッと開いた若侍達は、女一人と多寡をくくった油断を緊張させて一斉に真剣を抜き放った。
「卑怯者めッ、よくも不意を喰らわせた、何者だッ」
と真ッ向から圧倒的にひしひしと詰め寄った。――その向うはと見れば、これは髪に霜さえ置いた一人の老武士が血を塗った槍の穂をピタリとつけて、子を奪われた鬼子母神の怒りもかくやの血相で、はッたと多勢を睨みつけた。
「黙れッ、他領の平和を紊すとは天人共にゆるしがたき奸賊輩、かく申す某は千浪の父正木作左衛門、汝等神妙に帰国致せばよし、さなくば無辺流の槍術の奥儀を示すから覚悟致せよ」
と娘の千浪を背後にかばって、りゅうりゅうと短槍を扱きならして穂短かに掴んだ。
「おおさては汝が作左衛門か、貧乏大名の粥喰いが何ほどの腕立て、邪魔立て致す分に於いては嬲り殺しだぞ」