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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

四

酒と云っては 香りにも咽せる新九郎は、独り舷に頬杖ついて、この美景に見惚れていた。すると、すぐ眼の前を流れ行く一艘の尾形船から、こっちへ向って、不意に、

「あらッ――」

という嬌かしい声。

四

「お――」

新九郎は思わず半身乗りだした。

しかし、向うは下って行く船、こっちは溯って行くところ、見る間に間はずッと開いてしまう。

が、声を投げた女は屋形の外に立っていたので、新九郎の瞳にありありと映った。ぱっと冴えた浴衣着に、人魚のような洗い髪を吹かせてニッと笑った――それはお延に違いなかった。お延の方もはっきりと新九郎を見たらしい。再び声をかける間もなく船と船の間が遠ざかったので、手から、ヒラヒラと何か投げた。それは赤地に草模様を銀摺りした女扇だったが、川風にクルクルと舞って、あらぬ方角へ飛んで行った――と、簾を垂れこめていた小形の船の主が、その扇を拾い取ったらしい。

「よウよウ新九郎様、お安くないところを見せつけやすね」

と胴の間に宴を張っていた生不動の乾分は、今の様子を見てドッと囃した。新九郎は不快な色を包んで軽く笑っていた。蘭谷が焔となった夜、執拗な山荘の妖婦、投げ槍小六――それはどれ一ツとして、快い憶い出であるものはない。