Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
四
と、周囲へ囁かれた将軍の面にも包まれぬ喜色があった。すぐ立座行装触れ、潮のような人が動いて帰城となったが、松平家の幕屋と京極方の二所ばかりは、悲喜転倒のありさまで、薄陽の暮るるころまで人影が去らなかった。
かがやく栄光の冠をいただいた春日新九郎は、忠房の前に引き退がって手を取られたのも、入りかわり立ちかわり来て浴びせかける讃辞をも、ただ夢中に聞いていた。――そして頭はいまだに鐘巻自斎と立ち合っていた時の昂奮につつまれ、あの怖るべき太極刀の必殺をどうして遁れたか、どうしてあの瀬戸際に残ったか、ほとんど奇蹟のように思いつつ、いつか自分の身は、どッぷり暮れた松並木を駕に揺られているのである――
そうだ、彼はこれから松平家の下屋敷に開かれる祝宴に赴くのである。吉報はすでに下屋敷へ飛んで、そこに今日の勝敗を神かけて待ちぬいている千浪や、また今度のことではるばる福知山から飛んで来た、由良の伝吉とも久しぶりで会うことになっている。
祝福された勇士を乗せて、駕は一文字に風を切って走った。間もなくさしかかる青山の権田原、松の片側並木は見附の前までつづいている。――と風か、非ず。