Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
六
「逃げやした。逃げっちゃいました」
「誰がだ、はっきりと云え」
「座敷牢へ抛り込んでおいた若い侍と、姐御らしゅうがす。築地の破れを跳び越えて、間道伝いを一散に落ちて行ったんでがす」
小六は意外な恋仇に出し抜かれて、聞くより嫉妬に煽られた残虐な相を現わし、
「よしッ、拙者が追いかけて仕止めてやる」
とぶるぶる身をふるわせながら、更に、
「貴様達は人数のある限り、松明を振って、谷から裏山を隈なく探せッ」
といいつけた。
そして自分は異名をとった手馴れの投げ槍、気合をかけて手から放せばつばさを生じた飛龍の如く敵の胸元を射貫くという、四尺九寸の樫柄を小脇に引っ抱えて、二人の後を血眼で追いかけたのであった。
六
「まああれをご覧なさいよ、何て馬鹿馬鹿しい騒ぎをしてるんだろうね……」
とお延は新九郎を顧みて笑った。
二人は今、九十九折の岩角に腰かけていた。
ここは山荘の間道から外れた、但馬街道の切所へかかる峠の中腹であった。その高い所から見渡すと、遥か蘭谷から神斧山の峰谷々の闇を、点々と走る松明の光りが、狐火のように見え隠れするのであった。
「誰があんなのろまに捕まるもんかね、そんな愚図なお延さんじゃないんだから――今頃はさぞ小六も洞門の奴も、あの松明の中に交じって、血眼になって騒いでいるのだろうよ……」