Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
五
しかし、当の怨敵と首を狙ってきた金井一角、投げ槍の小六、笊組の三下共は既に一人としてそこに影を見せていなかった。ただ、そこで目についた物は、たッた一本取り残されてあった看板柱で、一同がふと見上げると、裏をかえして掛け直したらしい板面に、墨痕淋漓と書き流された達筆な文字。
当節堕落の似非武芸者ども、刀槍をもって博技売芸の沙汰あること武術の穢罪これに如くはあるべからず。遂に醒めざれば即ち鹿島香取剣神の御罰まずこの通りたるべきもの。
月 日鹿島の使者孤剣飄客
この筆者が鐘巻自斎であることは云うまでもない。
五
三叉の女屋敷菖蒲の寮は、大川筋の水明りから明けて、絵絹ににじませたような芦の洲や寮の屋根などが、ほのぼのと夢のままに浮かんできた。
綿のような霧の中から、すくすくと伸びて見えるのは寮の裏にあたる男松女松、そこから吹き込んでくる朝の涼風は、まだ起きもやらぬ長廊下をそよそよと流れて、奥の数寄屋に見える水色の絽蚊帳を波うたせていた。
そして、深い深い眠りに落ち入ったまま、絽蚊帳の裾が寝顔をなぶりぬくのも知らず、昏々として醒めざる人は春日新九郎であった。