Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「やッ、げ、げ、玄蕃とな!」
ともがく手足を、更に一人の黒装束――大草額平が押さえつけ、玄蕃は存分な毒罵を与えた上、喉笛狙って止刺の一刀を突き向けた。
「残念じゃッ! 千浪! 千浪――」
二声呼んだ吾が子の名が、彼の最期の叫びだった。その声は、よしやどんなに遠くに隔っていても、きっと、きっと、千浪の夢に届いたであろうと思われた。その後の騒動は云うまでもない。ただ幸いなことには、小川に落ちていた駕屋の口から、大月玄蕃が手を下したということだけは明瞭になった。また松平家から急使が立たないうちに、由良の伝吉は向う鉢巻で駕の中にブラ下がり替り肩三人つきの早打ちに乗って、エイヤエイヤ福知山指して急がせた。それが当夜の真夜中子の下刻(一時)であった。
悲報の早駕が、如意輪寺の門前についたのは満二日目の夕方である。境内の月巣庵に障子から仄かな灯が洩れていた。
鐘巻自斎の木剣のために、片足不具となった春日重蔵は、今は弟の愛人千浪に侍かれて、朝夕新九郎の上達を一念に祈っている他、苦楽の塵を捨てていた。
「重蔵さん、千浪さん、何だか門前へ早打ちが着きましたよ。何でしょう、何でしょう」