Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
三
三
銀河の星の数ほど、隅田川にあつまった涼み船の灯を、一瞬に吹き荒らして、晦瞑の濁流としてしまったあの夜の嵐は怖ろしかった。
物がたりは、ここから支れて、春日新九郎の身に移ることとなる。が、その夜その一つの船から奔流の底へ巻き込まれた彼は、既に、しっかりと、生命を意識している人ではなかった。
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「おお、何という怖ろしい浪でございましたろう」
「浪より、あの風の激しかったこと。ようお帰りなさいました」
「憶い出してもゾッと致します。それに衣ものもビッショリ濡れているせいか、私はまだ歯の根が合いませぬ。オオ寒……」
「それより御方様は?」
「案のほか、お船の縁に倚ったまま、平気なご様子で、凄まじい稲光りを眺めておいでなされました」
「まア、日ごろは、露にも耐えぬお優しいのにも似ず……」
「やはり、氏素性というものは、こうした時に争えぬものでござります」
嵐が鎮まって後、人を馬鹿にしたような月が冴えだした頃、やや流れも緩んだ波うち際に、若い女たちの声が、甦えった歓びにはしゃいでいた。
そこへは、一艘屋形が着いたばかりであった。大川もずッと下流の、浜町端れのその寮からは、船を見るとすぐ、案じていた老女や腰元らしいのが走り出して、ズブ濡れになった朋輩を引き上げたり宥ったりしていた。