Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
そうすれば、なアにこんな平街道、とッとと走って行けば追いつきますわい」
「いや忝けない」
新九郎は、欣びほどの礼を云う遑もなく、再び疲れた体に鞭打って、並木から並木つづきの街道を一心に走りつづけた。
三本木から杉戸あたりを過ぎると、もう一軒の家もなく、右はだんだんに柳を植えた堤となり、左は草深い一面の原。
「はッ……」
思わず火のような息を吐いて足を休めると、初めの熱汗は極度の疲労で冷汗となり、しばらくは、空を仰いで星月夜の涼風を入れる気力もない。
と、今まで気がつかなかった尺八の音が、かすかに行手の先を辿って行くようである。
「あれじゃ! もう近い」
にわかに気力が甦えって来た。彼はまた四、五丁も一気に走った。尺八はいよいよ近く聞える。もう一息――と思いつつ駈け出して行くと、糸が断れたように、ぷッつりと音が絶えた。
「オウーイ」
新九郎はそこから声を揚げはじめた。
「オウーイ。オウーイ」
答えはない。尺八の音も再びしない。
彼はハッと胸を轟かせた。何か怪しげな物音を一ツ聞いた。そう思って耳を澄ませば、時折、剣と剣の合うような冴え音。
「何か異変が? ――」