Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「あ? ――」
新九郎は息づまるような声を思わず裡に引いてふるえた。
「その夢がどんな夢であったか、思い出すことがござりますかの? ……」
おおそう云えばあの頃、熱に浮かされたような怪しい悪夢の薄ら覚えがあるようでもある。ああ、ではその幻の裡に――と思うと彼の全身は憤恚の火となって包まれた。
「ああ怖い顔、そのように睨んでは嫌じゃ、止めて、やめて……」
と云いながら、御方はいきなりフッと籠行燈を吹き消した。不意に落ちた闇の帳……新九郎がはッとして跳びのく音に添って、御方の影も豹のように追いかかった。
「怒ったのでござりますかえ? ゆるして賜も」
「畜生! 悪魔! 夜叉!」
刎ね飛ばそうとする新九郎の悶え。
「おお、妾は夜叉じゃ、恋の夜叉じゃ!」
恋に狂うた女と、凜々しい武士の魂に生きようとする男とは、しばし、如法の闇に争い続けた。
七
翌日、二人の修験者が、菖蒲の寮の離亭へ覚明を訪れてきた。この者達は、三年に一度くらい大峰の修築をするとか、役の行者を祀るとか、いい加減な名目を設けて、諸国の手蔓を手繰って勧進の悪銭をあつめ廻る輩だった。
「おお待ち兼ねていた。中仙道の方の金寄りの工合はどうであったな」