Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「往生際の悪い奴めがッ」
いきなり颯然と銀光の輪を描いて、躍りかかりに斬りつけた。――はッと思うと、玄蕃は背後に大樹の幹を背負って、退きもならず、かわしもならぬ絶体絶命となっている。もうこれまでだとなると、彼は猛然と捨身になって右肩の上に発矢と刃を受けるや否、横に飛び退いて身を沈め、猿臂伸ばしにピューッと新九郎の足許を地摺りにすくった。
飛燕の如く新九郎の体が跳ぶ――
斬り辷った大月玄蕃は、あだかも抜手を切って泳いだように体と刀が蛇身に伸び込んだ。
「えいッ」
と同時に新九郎の気合、パチンと紫色の火花が散る――と思うと二、三合、シュッシュッと刀競りに縒り合って、あわや鍔競り――双方必死の足技を試みつつ、タタタタと押しつ押されつの息喘ぎ、昼なら玉なす脂汗がどっちにもギラギラ見えたであろう。
こうなると大月玄蕃には、衆を恃む卑怯な心も失せ、真の自力に胆を据えて、さすがその昔一刀流で山陰随一と言われた腕前侮るべからざるものがある。
「ええい!」
面を打つ含み気当。
「おおッ」
と新九郎の気合返し。鍔と鍔は鋲を打ったようにガッキリ食い合って、互いの顔と顔の間で、十字に絡んだ剣尖のみが、ただかすかな光のふるえを刻んでいるばかり――