Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
抜身脅しの詮議の結果、もう一刻程前に、血と泥と雨にまみれた一人の浪人が、この店を叩き起して、一升枡の冷酒に舌うち鳴らした上、料紙と硯を借りうけ、何か認めたものを小袖づつみの生首の髻に結びつけて、たッた今愛宕通りを左へ曲がって行ったということが仔細に分った。
そして、その浪人というのは、御曹子の新九郎だという註までつけ加えたので、さては、春日重蔵の弟の所業であったかと、溝口を始め京極家の若侍どもはひとしお歯ぎしりして息りたった。
朝焼だ! 朝焼だ! 空が血のようだ。
春日新九郎は気が狂いそうだ。
何だか滅茶滅茶にうれしい、うれしくってうれしくって彼は気が狂いそうだ。
京極家の上屋敷を蹂躙してやった。玄蕃の首を叩ッ斬った。仇を取った。酒を飲んだ。朝焼だ。道まで真っ赤だ。
朝風衝いて新九郎はどんどん走った。玄蕃の首を横に抱えて夢中に走った。駈けてるうちに、このまま歓喜の雲に乗って天上するようなうれしさだった。
兄の重蔵にこの首を見せたらば――また千浪にこの首を見せたならば――どんなに二人が満足するだろう、うれし涙をこぼすだろう。
けれど、二人に会うことは出来ない。