Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「やッ己れは? ……」
と浪人は、立ちすくんで愕然とした。――と同時に新九郎も、
「おお汝は大月玄蕃であったの!」
と手を縛られたまま両膝で立って、意外な声をほとばしらせた。
「おう玄蕃だ。汝はすでに音無瀬川に飛び込んで死んだとばかり思っていたが、さては悪運強く今日まで生きのびておったのか」
「うーむ、今はあの時の新九郎ではないぞ! この両手さえ自由になるなら、一太刀なりと千浪の怨みを酬いてくりょうものを……」
「えいッ、うぬあ邪魔だッ」
と洞門の権右衛門は、その時新九郎の縄尻をグイと引いたので、彼はあっと後ろへよろめいてしまった。
その態を、心地よげに見流した玄蕃は、
「はははは福知山名代の腰抜けが、人並みな広言は片腹痛い。じたばたせずとも大月玄蕃が一刀流の切尖で、この六部から片づけるから、神妙に汝の番を待っていろ。今日こそ冥途へ届けてやる」
と冷罵した。そして、
「六部ッ、立ち上がれ」
ときっぱりと向き直った。
戸川志摩はくわッと眼をみひらいて、
「その方どもから我に刃を持たすとは、天のご加護、汝等の悪運の尽きるところじゃ――」
と静かに左の片膝を立て、左の手に鞘の七分三分のところを掴んでジリジリと起ちかけた。