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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

ピヤノの音は漏れてはこないが、その代り、ミシンのうなりが間をおいて聞えるような気がする。

坪庭の門は固く閉ざされていた。土べいにあけた風抜き窓から、明りをうつした離れの障子がみえるだけである。

彼はこうして、夕やみがあたりをおゝうまで、屋敷のまわりをぶらつくことで満足する。まさかこの時刻に、玄関から案内をこうて井出夫人のまともな客となる気はしない。それはなんとしてもかつこうのつかぬ図だとわかつている。それならむしろ、この土べいを乗り越えて、あの離れの縁先へ忍びより、「こん晩は」と声をかけてみる方が自分の柄に合うのである。

それにしても、彼女の方ではいつたいこの自分をなんと思つているだろう、ということが、今夜はじめて問題になりだした。それは実に、とつぜんのことである。三日にあげず彼女に会い、そのたびごとに、なにか口実のようなものを作ることにすこしばかり苦心はするけれども、それはたゞあまり用もないのに顔を出すのはへんだというくらいな心づかいが主で、彼女の自分に対する特別な関心、ことに異性としていくばくかの興味を期待するような気持は、まずなかつたと言つてよい。