Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
五
そのかわり、わたしの方が、どこでもよく知つてるの。青森から北なら、たいがいのところに友達がいるの。十四の時から方々渡り歩いてるから……あゝ、ねむい……」
ヨシ子さんと呼ばれた、この小柄な、しかし、一番年かさらしい女は、もう眼を閉じていた。
五
船の半日、汽車のまる一日は、しつかりした道案内のおかげで、なんの気づかいもなく、もの珍しい沿道の風物に眼を楽しませる余裕さえできて、井出康子は、食糧の心細きをのぞけば、行く先の不安などは、もう消しとんでしまつていた。
が、函館から札幌までは、ほとんど立ちどおしで、ゆつくり座席のとれたのは旭川から先であつたが、さて、向い合つた女二人の話題は、相変らず当りさわりのない範囲を出なかつた。向うからも立ち入つたことは聞こうとせず、こつちも質問の限度を心得ているから、鉄道線路にクマが出るというのはほんとか、とか、南樺太にもロシヤの女はたくさんいるか、とか、そんな問いに、相手は、別段力を入れて返事をするわけではなく、それだけに、また、康子たちに対して、ひと通りの好奇心はもつているらしいが、それをどういうかたちかで現わすでもなく、細川ヨシ子は、たゞ、行きずりに相会うた女同士の、ほんのなんでもない心やりを示すにすぎぬというふうで、きわめて事もなげに、この親子をあしらつていた。