Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
十
浦賀と、紀州の田辺とこの宇品とを、もう二度も往復いたしました。少しばかりの食料はもとより用意したお金も、とつくにつかい果しました。それはもとより覚悟の上でしたけれど、とう/\こゝまで来てしまいました。見栄も外聞もなく、いちばん手近な働き口をと思い、ある喫茶店、と言つても港町のいかがわしい飲食店で、その日暮しの給仕女にやとつてもらいましたの。
でも、こゝにこうしていれば、南からの復員船が時々はいります。その度ごとになんか手がかりになるような話を聞くことができます。わたくしの待つている人は、どうやら戦争犯罪の容疑者として、どこかに抑留されているらしいことがわかりました。ふ虜収容所にいた関係とかで、それは調べがつくまでだそうですけれども、わたくしは、たゞあの人を信じていますの。
十
北原ミユキの手紙はまだつゞく――
――はじめはほんの口すぎのつもりでこんなところへはいつたのですけれども、こういう社会には今まで想像もしていなかつたようなむきだしな生活があつて、わたくしなんかにはほんとにいゝ修業になると思い、ちかごろはだん/\周囲となじむように心掛けております。