Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

青春の孤独

一

「そうか? 信州のいなかとどこか違うか?」

「いなかという点ではおんなじかも知れませんけれビ、あんまり外へ出ないのと、なんていうんでしよう、気分がすつかり違いますわ」

彼女は、自分でもばかげたことをと思いながら、ほかに適当な返事ができない。「久しぶり」という言葉からして、彼女の今の気持ちにはそぐわないのである。たゞ、落ち葉に埋もれた森の小道と、おう悩の胸に降りそゝぐ秋の日射しとが、彼女の青春の一つ時をよみがえらせたといえばいえよう。

すると、小高い堤防が林を区切つているのに出会う。堤防にあがる。ひとすじの流れがところどころ砂ぞこをみせてまつすぐに空の光りをうつしていた。

青春の孤独

一

市ノ瀬牧人はI市の地方事務所で開かれた農業技術員会議をたつた今おえて、自転車で目ぬきの通りを走つていた。会場を一緒に出て来た。村の同僚は、町に来たついでにすこし買物をして帰るというので、彼はひとりで、ちかごろ急ににぎやかになつた店先をたゞぼんやりうちながめながら、高砂館という劇場兼映画館の前にさしかゝつた。

六時開演とあるのに、まだやつと三時になるかならないうちから、もう一丁以上も続いている長だの列を、彼は珍らしい風景として目をそばだてないわけにいかなかつた。