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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

八

「じや、いずれまた……東京へお遊びにいらつしやいね。それから、あす、市ノ瀬さんが、お迎いに来ますつて……朝……なん時ごろ、市ノ瀬さん?」

「…………」

市ノ瀬牧人は、キョトンとして、康子の顔をみた。

「きつと、九時から十時までの間よ。さよなら……。しばらく、おとなしくしてなきやだめよ」

ボートが岸をはなれようとした。

と、いきなり、北原ミユキは、ひと足ふた足、走しり出るようにからだをのめらして、叫んだ――

「わたしも乗せてつて……わたしも行くわ……上諏訪まで……」

半信半疑の面もちで、市ノ瀬牧人は応じた――

「帰りはどうするね?」

すると、北原ミユキは、キッパリ答える――

「帰りは、またあんたに送つてもらう」

「はよう、乗りない!」

康子は、声をたてゝ、笑つた。が、胸がぎゆつとつまつた。

八

その日のことである。

もう夕もやが水の上をはつていた。

オールを静かに動かしている北原ミユキと、それに向い合つて、腕を組んでいる市ノ瀬牧人と、その間に、さつきから深い沈黙がつゞいている。

ちらほらつきはじめた岸の火影に、北原ミユキは眼をうつすと、思いだしたように、彼女は言つた――