Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
六
しかし、詩人は残忍ではあり得ないということだけわかる」
「そうかしら? でも、戦争に行くと、だれでも少し気がへんなるんじやない?」
「へんになるね。変にはなるけれども、人間が変わつてしまうということは絶対にないと思う。ふだんはかくされているものが、ふつと現われるだけさ。つまり、いわゆる日本兵の残ぎやく行為ね、あれなんかはだよ、わしの考えでは、どうも、子供の時分から手荒なことをするいたずらぐせが、大人の分別を失つた瞬間、ふつと頭をもちあげて来たもんだよ。その証拠に、そのやり方をみてると、じつに他愛もない、よけいなまね、バカ/\しい強がりみたいなものが多いんだ。これはその行為を弁護することにはならないよ。たゞ、そういうことは、できない人間には絶対にできないんだ。道徳的判断がそれをさせないのじやない。そういう習性がないだけの話さ。そうだ、この習性は、ふだんわれ/\日本人が、それほど恐ろしい悪質なものと思つていなかつたんだ」
六
市ノ瀬牧人は、彼がみずから戦場で目撃したさま/″\の光景をいままた眼の前に浮べるような表情でそれを言い、
「野ばんということが、そんなに恥じではないという不文律が日本の男のなかにはあつたからね」