Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
六
六
神社の境内をぬけ、新しく開墾したらしい麦畑の間をぬつて、道は急な登りになる。
先登にたつて北原ミユキは、一番うしろの康子に話しかける。
「わたし、もう父とけんかしてしまいましたの」
「どうして?」
「わたしがあんまり勝手だつていうんですのよ。だから、勝手なのはわたしじやなくつて、家つていうもんがわたしとは縁がうすくなつたんだ、つて言つてやりましたの」
「そんなことおつしやつたら、お母さまがきつと悲しくお思いになるわ」
「母には感情つていうもんがないんですの。そんなはずないと思うには思うんですけど、まるでそうとしか思えませんわ」
こんな話を聞いていたので、どんな家かと想像しながら、それでも相当の構えをした農家のしきいを、康子は何気ないふうでまたいだ。
が、やはり彼女は、両親や、兄嫁というひとや、それらから、冷やかなものを感じ、市ノ瀬牧人を紹介するのにも気おくれがするほどであつた。父親のごときは、露骨に、彼に対して無関心を装い、取りつく島のない態度を示した。
もうひるの時間ではあつたが、母親がひとこと、申しわけのように引きとめるのもきかず、康子は、市ノ瀬牧人を促して座をたつた。