Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
六
「戦犯か……。うつかりすると、やるからなあ」
と、ため息まじりに、つぶやいた。
六
その話はそれきりだつた。
井出康子は、北原ミユキの手紙について、あれこれと想像をめぐらし、それこそ言葉にはつくせない心のもだえを察すれば察するだけ、自分と彼女との立場のへだたりを感じ、そのへだたりをうめるためにも、だれか親身にこの話を話し合う相手がほしかつたのである。一方にきまつたひとがあるという場合、若い異性の間は、こんなにまで遠いのであろうかと思つた。
また歩きだすと、モトムは、日ごろになく弱音をはき、ぐつたりしたふうをみせ、足をことさら引きずるようなまねをする。彼女は、はじめのうちは、快活に、じよう談などまじえて元気をつけつけしていたが、しまいに、やゝ真顔になつて、そんなことで男と言えるか、などと言い、自分も実は足の痛みに閉口しているのを、「お母さんをごらんなさいよ、歩くのはいつもあんたにかなわないのに、きようはあべこべじやないの」と、足を早めてみせた。
「すこし休みますか?」
と、市ノ瀬牧人は、気をきかせて、いくども言う。
「いゝえ、そんなことしてたら、なお遅くなるわ。