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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

五

その点、もうなにも言うことはありません。このまゝ、こゝを引きさがつてもいゝわけです。しかし、お話を聞いているうちに、わしはやつぱり奥さんを信じて、奥さんがこうしてくれと言われることなら、どんなことでもきくのがほんとだという気になつて来たんです……」

五

市ノ瀬牧人は、そこでちよつと考えこんだ。そして、大きく息を吐くといつしよに、

「これは、まあ、宿命のようなもんです。それと同時に、こいつは、奥さんに対する……言葉はなんでもいゝですが、まあ、わしの心のありつたけ……です」

と、彼は、額をおさえながら、顔を伏せた。

井出康子は、その様子をみて、はつとしたように肩をおとし、そして、やゝ、しみ/″\とした調子で、

「わかつてます、わかつてます。立派よ、あなたは……ほんとに立派よ……。それにくらべて、あたしは、なんていう女でしよう。なにひとつ、自分の意志でものごとを決められないの。こうしたいからするんじやなくて、こうせずにいられないからするの。つまらないわ、そんなの……」

「いや、それがいゝんです」

市ノ瀬牧人は、キッパリ言い放つた――

「わしはそれが好きです。それがほんとだと思うんです。