Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

五

まあ、お元気で……」

軽く会釈をしてもう行きかける男のうしろ姿へ、

「どうもありがとうございました。では、お気をつけになつて……」

北原ミユキは、急に力がぬけたように、板べいを背にしてその場へへた/\としやがみこんだ。疲れと、ひもじさと、寒さとが一時に襲いかゝつた。こんなことではいけないと思うのだけれども、どうしようもない。手さげの中にまだ残つている握り飯を取りだす気さえしないのである。

そのうちに、うと/\と眠くなつて来た。

野良犬がひざのあたりをかぎまわす、そのけはいに驚いて眼をさます。

遠くに汽笛が聞えた。

浜島茂がひとりぽつねんと船の甲板に立つている夢をみていたのである。

五

やつとの思いで、北原ミユキは腰をもちあげた。

街のあかりを目当てに、ふら/\と歩きだした。どこへ行こうというのだろう? 自分でもはつきりそれと意識してではないけれども、どうやら、停車場の方角へ足が向く。

寝静まつた街のなかは、水底のような深さを感じさせるだけで、夜の不気味さなどはどこにもなかつた。

停車場というものは勘でたどりつくことのできるものらしい。彼女の眼の前には、やがて、田辺駅の小じんまりした建物があらわれた。