Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
真実の声
一
康子は、こんどは、からだを折つて笑い、
「そういうお話なら、まあ、お茶でもいれましよう」
と言いすてゝ座をたつた。
つきのわるいガスの火をつけながら、彼女は、ひとり、さつきからの話の経過をもう一度繰りかえして考えてみた。
単純なようで複雑な男のこゝろ、複雑なようで単純な女のこゝろが、そこでは典型的な対立を示しているように思えた。その二つの心のまじわる線がどこにあるかは別として、危いのは、北原ミユキでなく、市ノ瀬牧人の方だと、彼女は直感した。
茶を運んで座にもどつた時、彼女は、北原ミユキをこのうえ悲しませてはならぬと心に誓つた。
真実の声
一
津軽海峡の連絡船はもう三日欠航をつゞけていた。
青森駅からさん橋までの通路は人に埋まり、町の旅館はどこもむろん満員であつた。もう初雪が降つたというこの地方の、十一月とは思えぬ夜風の冷たさに、破れガラスの窓の下でいく日も船を待つ人々の皮膚は血の気を失い、毛布を頭からかぶつてうずくまる旅なれた連中のすがたのみが、世にもぜいたくなものに思われた。
ひとわたり、この人ごみの中をかきわけて、なにかを探すように歩いてみたが、井出康子はいまにも泣きだしそうな息子の顔をのぞきこみながら言つた――