Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
六
六
海岸線に近づくと、なるほど、太陽の光りは乳色の霧のなかに吸いこまれて、沿道の木立も、家も、牧場のさくも、家畜の群れも、いずれも、輪郭のぼやけた影絵のようなものになつていた。それは、いかにも現実ばなれのした夢幻的な風景として康子の眼にうつるのだけれども、もうこゝからワッカナイは遠くないと聞かされ、急に、これは大変なところへ来てしまつたという気がした。
どこかで聞いてあげるからという細川ヨシ子の言葉に力を得て、康子はしびれたような腰をもちあげて、やつと、プラットフォームに降りた。そこは、もう、不思議な気体のうず、ガラスの粉をまきちらしたような空間の連続であつた。
案内を見失わないように、康子は、モトムを急きたてながら歩いた。
駅前の交番で、細川ヨシ子は、これ/\とたずねてみたが、いつこう要領を得ぬ。彼女は、康子に眼くばせをして、一軒の旅館らしい建物のなかへはいつて行つた。帳場にいる男が、しばらく考えて、
「わかつた。この春、認可をとつたボロ会社だ。こつちへ出張所をこさえるつていう話だつたが、まだできた様子ば聞かんなあ。あんたたち、その会社を訪ねるのかね。