Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
無理にさゝれる酒をわりに平気でうけて、それほどふら/\にならないのは、自分ながらあきれるくらいである。
アパートとは名ばかりの、えたいの知れぬ貸間を彼女は仲間の一人といつしよに宿にしている。その仲間の筒井レイ子という女は、彼女より二つ年下の二十三であるが、先輩としていくぶん幅を利かし、夜も帰つたり帰らなかつたりする。二人の部屋には絶対に男を遊びに来させないことゝいう約束があるので、北原ミユキも、やつと安心していられるわけであつた。
部屋へあがると、すぐ寝る支度をする。店の主人が工面をしてくれたセンベイ布団にくるまる前に、入口に投げ込んであつた一通の手紙をひろいあげる。口もとに冷笑がうかぶ。封も切らずに、破つて、丸めて、部屋のすみへなげすてる。二等機関士と称する若い客の、いつもの美文調の口説である。店へ来ると、まるでそんなことはした覚えがないような顔をしているのが、彼女には面白いのである。が、もう、その手紙のおなじことの繰りかえしに彼女はうんざりしてしまつた。
さて、電燈を消す。横になつたとたん、
「ユキちやん、もう寝たのう?」
と、廊下で、乱れた足音といつしよに、筒井レイ子のどなる声がした。