Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
十一
ゆうべは、店でずいぶんバカなまねをいたしました。お酒のいきおいで、口からでまかせのことを言い、ひとりでいゝ気になつて騒いだのですけれど、そんなことは、あとで考えるとつまらないことで、すこしもものごとの解決には役立つておりません。自分で自分をまぎらすだけなら、いくらも方法はありそうですけれど、それは、苦しみをだん/\深くするだけだと思われます。でも、おなじ苦しい思いをするなら、その苦しみが中途半端なものでなく、とことんまで苦しんでみたいという気にもなります。そういう苦しみがどんなものかということは、こうしていてはわからないにきまつています。それは、まだ/\、生来の自分というものに望みをかけすぎているからではございますまいか。自分で自分を一度は踏みつけにするような生活、そういう生活のなかでちつとも悔いのないひとつの立場をみつけだすことができたら、と思うのですけれども、それはわたくしには勇気がなさすぎます。今まで大事だと思つていたものをすてきつて、ほかのもつと大事なものを身につけるためには、こんななまぬるい生活をしていてはだめだということがわかりました。