Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
八
「あ、こちらにはおまつりしてはございませんの」
八
彼女は、そして、言葉をつゞける――
「母と妹は、主人の弟の方へ参るようになつたもんですから……。こゝは、あたくしと子供と、いま二人きりで、まあ、旅先というようなかつこうですわ。ごらんなさい、あたくし、仕立屋をはじめたのよ」
ミシンと、一と山の材料の方をあごでさして、彼女は、かすかに笑つてみせる。
「けつこうです。戦死をされた小倉閣下の奥さんは、なんでも、道ばたでアメ玉を売つておられるそうです。それがほんとじやありませんか。もつとも、板につかんので人がじろ/\見るらしいです」
「そうでしようね。あたくしの場合は、そんなこと自慢のつもりで申しあげてるんじやないの。どうして暮してるか、ご心配くださるといけないから……」
「あゝ、そうですか。しかし、奥さんなら、なんでもおできになるつていう気がします」
「そうかしら? そうでもないのよ。でも、親せきのやつかいになるよりいゝわ。あたくし、もう、愛情と関係のない因縁つていうものをいつさい絶ちきりたいの。たゞ、自分で不安に思うことは、これが愛情だときめても、それが、小さな愛情じやないかつていうことね。