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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

わしは、あんたの立場として、あんたはもう自由なんだということを言いたい。それは、いろんな理由からそう言えるんだが、第一に、その若い生命を空なお題目のために犠牲にしちやならんということだ。二十年間帰らぬ恋人を待つなんて、およそこつけいだよ。悲惨を通り越してるよ。人間わざじやないという意味で、神々しい半面があるかも知れないが、そいつは、自分の心をためしてみれば、すぐに、ほんものか、にせものか、わかるはずだ。あんたには、そういうことはできないよ。できないのが当りまえで、不名誉でもなんでもないよ。あんたの、女としてのねうちに決して傷はつかんと思う、わしは」

こうまくしたてゝ、市ノ瀬牧人は、すこし照れたように、くるりと彼女に背を向けて、テラスの方へ一二歩、歩いた。

「奥さんとおなじことをいうわ、あんたも……」

と、北原ミユキは、ぐつたりといすによりかゝり、すこし調子をかえて――

「わたし、自分の気持がちつともわからんの。たゞ、今になつて不思議でならんのは、あんたに言われるまでもなく、わたし、自分のことばつかり考えてたつてことだわ。あのひとがかわいそうだつて、どうして、まつさきに思わんのでしよう……」