Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
一たん海に近づいた道は、いつのまにか海から遠ざかつていた。そして、たまには畑らしいものも眼につくけれど、おゝかたは、カラ松と白カバの林を縫うようにして、その道はどこまでも続いていた。
やがて、こゝで車を降りて、右へはいるのだと言われ、康子はハッとしてあたりを見まわした。なるほど、一軒の古びた小屋が大きく林を切り開いた、その道端に建つていて、そこから一筋の通がなゝめ右手の方へ通じている。
彼女は、この、人つ気のない、ぼうばくとした自然のなかへ子供と二人つきり取残されたとき、もう心細さを通りこして、泣くにも泣けぬような絶望感におそわれた。
が、彼女は、気をとりなおして、その小屋の中をのぞいてみた。だれも住んでいる模様はない。たき火をしたらしい跡はあるけれども、たゞそれだけのことである。
「さ、トムちやん、これから歩くのよ。海が見えるまで頑張りましよう。そしたら、もうじきだから、ね」
そう言つて、歩きだしはしたが、林は間もなくつきて、はるかに、小高い砂丘の連らなつている風景が眼にはいつた。
八
その砂丘地帯にたどりつくまでには、小一時間もかゝつた。そして、道はわだちのあとをかすかに残しただけとなり、それも、ところによつて立ち枯れの草の葉のなかに埋もれてしまつていた。