Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
そして、夫の方は見ずに、
「もう、なにをおつしやつても驚きませんわ。でも、こゝじや、いや……。もつと広々した、明るい日の射すようなところで、なにもかもおつしやつて!」
窓ガラスに顔をおしつけるようにして、彼女は、自分の声がうつろに響くことをおそれながら言つた。
「ふむ、そうか。そんな場所があるかい、いつたい?」
「えゝ、ありますわ、どこにでも……。外へおでになれません? このへん、どこを歩いても原つぱみたいですのに……」
「原つぱか、よかろう」
二人はそれ/″\支度をした。一徳は長かをはき、康子はコートを羽織つた。
建物の裏手からすぐ通用門を出ると、板べいで囲われた倉庫風の建物がいくむねも立ちならぶ間をぬけて、やゝ広い草地に出る。そこにもさま/″\な形をした鉄材が山のように積まれており、なかには明らかに砲身と思われるものが赤さびたまゝ不気味に横たえられてあつた。
康子は夫のうしろを小走りについて歩いたが、やがて草地のつきるあたりから、小道がまばらな雑木林に通じ、二人はいつの間にか肩を並べて歩いている。
「こういう道を歩くのも久しぶりですわ」
と、彼女は、ふと、そんなことを言う。