Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
それがすむとこんどは、一通の封書を康子の前へほうり出し、
「さ、あとのことはくわしくこれに書いてある。別に相談することもない。その通りに実行すればよろしい。お前のことはお前の自由にせよ、と書いておいたが、それは直接話すつもりだつた。しかし、お前はてんで話に乗つて来ないから、もう話すのはやめた。おれがいつ、どこで決心を実行にうつすかは、今、はつきりしたことは言えない。おそらくだれの目にもつかないところで、いつのまにか消えているということになるだろう。なにも井出一徳のあつぱれな自決ぶりを人にみせる必要もない」
康子は、その封書のうえへ、ぼんやり視線をおとしたまゝ、夫の言葉に耳をかたむけていた。
封書の表には、「井出一徳遺書」と肉太に認められ、そのかたわらに、「昭和二十年十一月末日以後ニ非レバ開封スベカラズ」と書き加えてある。
十一月末日といえば、あとちようど半月である。
康子はしずかに顔をあげて夫のほうをみた。
「では、どうあつても、ご決心をおかえくださいませんのですか?」
やつと、これだけが言えた。
「あゝ、変えない。それならどうして黙つてやらんか、と言うんだろう? なにをグズ/\してるか、と言うんだろう? その通りだ。