Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
そんなことをしてもぜん/\むだだ。そればかりじやない。いわば一家の恥さらしだ。このことはくれ/″\も言つとくぞ」
そう言われてみると、なるほど、自分が当然考えつかなければならない方法、手をつくすべき余地があつたのだということに彼女は気がつくのである。
夫が先輩として信頼し、そのうえふたりのなこうどであるN中将の顔がまず浮ぶ。同郷でかつ同僚のMも力にならぬことはあるまい。が、今となつては、もう、なんとしても気が重く、万一の効果ということよりも、その効果がまたひとつの新しいみぞを二人の間に築く懸念のほうが大きかつた。
彼女は、そこで、たゞ、
「はい」
と、答えただけで、深く首をたれた。
…………
真夜なかの、客車とは名ばかりの人間をつめこんだ列車の一隅で、いま、座席についてほつとした井出康子の眼に、まぼろしのように浮かぶかず/\の情景は、これでやつと読者の想像の範囲にはいつたことと思う。
彼女の胸がいませつなさでいつぱいだとすれば、それは自分の夫の「死」をどうすることもできずにたゞ見つめていなければならぬというような理由からではない。なにはともあれ、生がいを誓つた一人の男のいのちが、自分にとつてかけがえのないものだという信念の、むざんにもぐらつきはじめたこと、そして愛情が時にいつわるものだという事実をまざ/\