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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

道はいずこ

一

その列車なら、今度の和歌山行に乗ればことによると電車で間に合うかも知れぬとの返事だ。彼女はやつと光明を得た思いで、一時預けのリュック・サックを受けとると、出札口の行列に加わつた。

薄暗がりでぼんやりしかその顔を見ていない男の、どんな特徴を覚えていて、再び大勢の人なかで、それを探しだすことができると言うのか。まことに雲をつかむような話だが、彼女には、それがやさしいとかむつかしいとかいう問題ではなかつた。なにかひと筋の糸のようなものが、彼女をそつちへ引張つて行つてくれるものと信じているふうであつた。

やがて、切符が売り出された。

道はいずこ

一

井出一徳元大佐は昭和二十年十一月二十八日の夜、H工しよう裏のうず高く積まれた兵器資材の山のなかで、黒焦げの死体となつていた。ガソリンをしませた毛布にくるまつたまゝ、致死量の劇薬を服用し、意識を失う直前にライターの火をつけたのである。

翌朝になつてしよう員の一人がそれを発見した。

この事件があつてから一と月のちのことである。

遺骨をおいた床の間の前で、妻の康子は、夫一徳の実弟、三則とむかい合つて静かに話をしていた。