Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
伝吉は吾に返って叫んだ。
「きなさんな。今わっしがとって上げますから」
走り寄って、縛めを切りほどき、猿ぐつわを外してやると、待っていたように、女は、わッと声を立てて、そこへ泣き伏してしまった。
「おお、そちは千浪じゃないか!」
何で彼女の声を忘れていよう。新九郎は弾かれた如く寄ってその姿を抱き起こした。
女は泣き止まない。いよいよ咽び、いよいよ嗚咽するばかり、袖の奥深くへ面をつつんで、ワクワクと身をもみ悩む新九郎に、いつまで、はっきりと顔を見定めさせなかった。
「ええッ、やッぱり千浪様でございましたか」
と伝吉も仰天する。新九郎は心の底から絞るばかりな声――死者を呼びかえすような力で云った。
「これ、そなたは千浪ではないか。身は春日新九郎じゃ。人違いか、まことに、泣いていずとはっきりその顔を見せてくれい」
「し、新九郎様ッ――」
女の腕は、その時いきなり、ひしと彼を抱き竦めてきた。途端に、新九郎は茫然と、辻堂の床へ五体をくずしてしまう。ああ夢、夢でなくて、何で千浪のこの声、この力が、ありありとこの身に感じられる訳がない――と現の耳に、
「お、お懐かしゅうございました……新九郎様、ああ貴方はどうしてここにおいでなされます? ……」