Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

五

大きな底波は、思うさま二人の体を翻弄した。水練の覚えのない新九郎は、たちまち眼もくらんで二、三度水を呑んだが、一角は水技にたけている上、福野流の体術の心得が充分あるので、喉輪を締められながらも、足技を試みて、右手には素迅く短剣を逆手に持つ。

水中ながら、きらりと敵の脇差が眼を射たので、新九郎も必死を超えていた。幾たびか水に喘ぎながら、彼も脇差を抜いて、滅茶滅茶に一角へ突きかけたが、浮きつ沈みつする間に、息を計った一角は、巧みにその切尖を避けておいて、新九郎の片手を握り、グイと襟から離して体を自由にした。

その時、もう半ば意識を失った新九郎の体は、一角に振り廻されて、水中でグルリと大きくとんぼを打った――泳ぎながらあらん限りの力を短刀にあつめた一角は、

「畜生ッ」

と、下から新九郎の胴中を見澄まして、グイと狙い突きに突き刺した。

――切ッ尖三寸新九郎の脾腹をえぐったかと見えた時ゴーッという濁流の渦が、真ッ黒な物をそこへ押し流してきた――上の荒川から運ばれてきた朽木でもあったか、二人の体へドンとぶつかったまま流れ去ったので、さすがの一角も短刀の手を狂わせたばかりか、新九郎の腕を離してしまった。