Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
八
役儀表は、主君忠房の音物をもたらして、福井の城主松平越前守のご機嫌伺いであった。元来福知山の松平家と福井の松平家とは、姻戚関係のある親藩であったから、この使者は、年に一度は必ずある例になっている。
「藤三郎、今日はご用明きの身となったによって、夕暮まで他出致そうと思う。明朝出立の用意、手ぬかりないようにしておいてくれい」
作左衛門は自分の部屋で、無造作に出支度をしながら云った。若党の藤三郎は、ちょっとそれを手伝った後で、畳をすべって両手をついた。
「ではお供廻りの用意を致させましょうか」
「それには及ばぬ。まことはここから近い鯖江の町に、私の儒学の恩師牛石先生がおいでになる。もう滅多にお目にかかれぬ間がらゆえ、十年ぶりでお顔を拝して参ろうと思うのじゃ。槍の挟み箱のという仰々しいことはごくお嫌いな先生、それに暇どりするゆえ、一人で駕で行ってくる。結局その方が私も気楽じゃ」
「でもござりましょうが、せめてお駕わき一人は、是非お供にお連れ下さりますよう」
「む、折角の心配じゃ。では五平でも連れて参ろう」
と云っているところへ、次の間外に女中の声がする。
「伝吉様と仰っしゃる方が、お目にかかりたいと申します」