Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
そして、かねて合図を諜し合っていた大草額平は、その真ッ先にあった。
「それッ、女を先に片づけてしまえ」
千浪の身体は、たちまち、真ッ黒な荒くれどもの中に埋まってしまう。額平は一刀を抜きしごいて、重蔵の後ろから不意に斬りつけた。
「あッ」
と一方に気をひかれた重蔵は、額平の太刀を引ッ外して、千浪の側へ駈け寄ろうとすると、
「えい、もう観念してしまえ」
玄蕃と額平が左右からそれをさえぎる。いかにもがけばとて、目に余る人数、ことに二人が必死の強剣、それをあしらうだけでも、今では容易ならぬ春日重蔵。ああ、彼に一本の足さえ満足であったならば――
澄みきッた山の空気。その刃金の打音は、意外な所にいる人の心耳へ響いて行った。
かの、天狗の評定岩の上にあって、今朝から黙然と、浅間の煙を見つめていた長髯の武士は、その時、何に驚いたか、にわかに立って手にせる笠を、目の下の崖へヒラ――と投げ落した。が、青葉の茂みに呑まれた笠は、何の応えもなかった。
「はて?」
と、身を屈めた彼は、評定岩へピッタリ耳をつけ、ややしばらく、この静寂な天地に起りつつある何事かを、一心に、念索しているものの如くであった。