Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
さすがに御方もどこまで純情潔白な新九郎の物語には、すくなからず衝たれた様子。が、それで諦めたらしい色は微塵もなかった。むしろ、いっそう慕わしい者、男らしい侍という思慕を強めたくらいであった。
「分りました。もう無理は云わぬこととしましょうぞ、その代り、妾の頼みも聞いてたもれ。今宵だけはせめて寮に泊って、明日は朝なと、昼なと、いつでもお戻りなされたがいい」
「重々のご恩義に甘えて、お礼の申しようもござらぬ」
「けれど、これがお別れでは妾は厭じゃ、また折にふれては、訪ねてくれると、固い約束いたしおかねばなりませぬぞえ」
「それはもう、お尋ね致す段ではござらぬ」
「誓いの印に、妾がこれを預かっておきます」
「ア、それは」
新九郎が慌ててさえぎる隙もなく御方は側にあった大刀を持って、ツイと橋廊下の彼方へ姿を隠してしまった。
しかし、他ならぬ腰の刀、一時の戯れに過ぎまいと、彼は深く気にも懸けなかった。そして日が暮れる頃おい、常の通り食事後の服薬一服、水と共にゴックリのんで床につく。
ところが、何ぞ知らん、新九郎が夢にも気づかぬ聞に、その粉薬がいつの間にか、御方の手で、蘚伯秘剤の眠り薬とすり代えられてあろうとは。