Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「あの人も江戸へ来ているのに、一体どこに来ているだろうねえ……アア会いたい! もう一度しみじみ会って……」
熱に浮かされた病人のように、独りでかき口説いたり、黒髪をったり、果てはシュクシュク啜り泣いたりしだした。
「馬鹿野郎、またお株をはじめやがった」
小六はべッと唾を吐いて、忌々しそうに眉を吊り上げ、お延の肩を蹴飛ばしかけたが、その時表の方で客呼びの源七が、またもやしゃ嗄れ声を振り立てはじめたので思い止まった。
「さア出ないか出ないか! 江戸の男には腕ッ節の強い者はいないのか、小六先生を破るほどの者はいないか! たッた二分銀一枚で小判の山の掴み取り、さア飛び入りはないか、飛び入りはないか」
武芸を売り物同様な浅ましい声を振り絞って、源七がしばらく喚いていると、やがて見物の中から賭け試合の申し込者がでたとみえて、楽屋の小六に報らせの太鼓がドーン、ドーン、ドーン。それと同時に一分銀が何枚か景気よく銭笊の中へザラザラと舞い込んだ。
「先生お支度を願います」
と表からの声、
「心得た」
小六は職業的に緊張して襷をし直し、手早く外しとった玉槍の穂先で、蓆の裾をポンと刎ね上げ、そこから幕の表の方へと立ち現われた。