Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
更に白茶の柄糸の中にも燦然たる肉彫の三つ葵が目貫となっている。いずれにせよこのような刀は、常人の手にある筈の物でなく、千代田城の御納戸品か、貴顕の拝領物かでなければならぬ。ああどこまで寮の御方の身柄こそ謎である。
「春日様、お目ざめでござりますか」
老女の水瀬がいつの間にかそこへ来て微笑していた。解きがたい謎に迷っている新九郎ははっとして、
「おお水瀬様か、取り乱しております」
慌てて床を払って坐り直すと、老女も静かに前へ来て、御方から昨夜聞いておいた言伝を話しだした。
「昨日貴方さまのお刀を預りましたは、決して悪意でも悪戯でもござりません。嵐の夜に大分水に浸みておりますゆえ、御方様のお心づきでお出入りの研師に手入れにおやり遊ばしたまでのこと、その間のお差料には、お部屋に置きましたものをどうぞお使い遊ばして下さりませ。そのうち手入れの出来る頃にお越しになれば、いつでもお引き換え申そうから、お気を悪くせぬようにとのお言葉でござりました」
世間というものに馴れず、人に疑いというものを抱かない新九郎は、それをも御方の純な親切と思って、幾度か礼をくり返しふたたび来る日を約して、十幾日目かで寮の門から外へ出た。