Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
と云っても、悪女の深情けでは、そちらが余り気がすすまないだろうけれど……」
「そう云うお前には、確か投げ槍小六という男がついている筈」
「憎らしい。あんな男に心中立てするくらいなら、誰が今みたいなことをわざわざ知らせに来るものかね、ちったあ私の気持を察して下さいな……」
肩を並べた二人の影は、いつか歩くともなく道を捗どって、山の手から外濠の方へだらだら下っていた。すると、不意に新九郎が、
「あ……」
悪寒にでも襲われたように立ち竦んだ。
「おや、どうしたんですえ? 真っ蒼な顔をしてさ」
「お延、ありゃ尺八の音じゃないか」
「おおかた、外濠をうろついている、宿なしの虚無僧でしょうよ」
「…………」
新九郎は魔魅の声でも聞くように、宙に眼を吊らしてしまった。いかにもそれはお延が言う通りな虚無僧の尺八、縷々として咽ぶような哀音が、彼方の闇に迷っている。
「駕に乗ろう、何だか急に寒くなった。拙者は虚無僧の尺八を聞くと、妙に気が滅入ってしまう癖がある」
「変な人――」
お延は笑ったが、男が自分の首尾をうけ入れている様子に満足して、いそいそと駕を見つけた。そしてその晩から、二人の姿が、しばらく雉子町辺の遊び風呂屋に隠れた。