Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

「貴方は憎いお人でござります」

御方の顔色は、酔いざめの新九郎の目に、剃刀の如く冷たく鋭く見えた。

「水瀬や女中どもに手分けをさせて、どれ程尋ねたことやら知れませぬ。これ程まで、心をくだいている妾を捨てて、お前様はどこへ逃げるお心意でございますかえ?」

「逃げる? ……何で拙者が」

「いいえ」御方は姿の美しさと、怜悧な眼ざしに彼のうろたえざまを畳みかけて、

「分っておりますわいの、お前様は、あのお延という女の行方が知れぬので、どこにも落ちついていられないのでござんしょうが……、風呂屋町に隠れて、媾曳していたあの女が、いつぞやの夜から見えなくなったので、それが苦になるのじゃ」

「…………」

新九郎は俯向いてしまった。御方の粘りづよい、濃い油のような嫉妬は、彼の酒の名残まですッかり醒ましてしまった。

「ホホホホホ……」御方は何を思い当ってか独りで笑った。

そして、

「どうあろうと、妾はお前様という者を忘れることはできませぬけれど、憎いやつはそのお延、恋の恨みを晴らさずにはおきませぬ」

「御方、そのような女、この新九郎には覚えがない、何か思い違いでござろう」

「きっと、お前様は知らぬと仰っしゃるか」