Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「これ、大助」
と立ち淀んだ。
「へい」
「昼のうち承ったお長屋の方角とは、どうやら少し方角が違いはせぬか」
「ははははは、少しどころか、ここはまるっきりの見当違い」
「して此方を、それと知りつつ、一体何処へ案内する気じゃ」
「おお、八大地獄へ導いてつかわすのだ!」
「な、なんだとッ」
「珍らしや大月玄蕃、柳原土手では取逃がしたが、今宵こそ遁れぬところ、悪運尽きた百年目と観念して、その昔の腰抜け侍春日新九郎に討たれてしまえ」
地声を現した新九郎は、大音声と共に竹の子笠を刎ね捨てて、来国俊の鯉口を前落しに引っ掴み、ジリジリと玄蕃の前に詰め寄った。
「ややッ――さては」
と、驚愕の余りに、足駄を踏み辷らしてよろよろとなった大月玄蕃は、さすがにさっと血の気をなくして動顛したが、咄嗟に裃の前をばらりッと刎ねて、
「ウーム、さてはおのれは新九郎であったか、姿を変えてこの邸内に入り込み、此方の不意を狙うとは卑怯至極」
「いいや卑怯とは汝のこと、今宵弁慶堀で仇討の作法を踏むと誓言を立てておきながら、約束の場所にも臨まず、京極家の廂に隠れて生き永らえようとする卑怯者。兄と千浪に代ってこの新九郎がその首貰いに来たのだ。