Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
ただ、一きわ異常なのは、々たる二つの眸。それはまた人を射るごときものであった。
「唯事でないとは心もとない、一体何事が起ったのじゃ」
鈴を膝に乗せて木の根へ掛けた。
「新九郎さまの御一念が、天に通じたというものか、今日、麓の立場から乗せた侍が、どうもかねてお話に聞いていた奴に違えねえと思って、今この上で当りをつけて見ると、やッぱりそいつじゃごぜえませんか」
「えッ! では鐘巻自斎が」
「そうです。さ、新九郎さま、この上は一刻も早く、上へ登って尋常の勝負とお出かけなせえ、憚りながら、こんがらの重兵衛が後ろ楯に控えております」
「ウーム、忝けない……」
思わず合掌して天を拝した行者――それは言うまでもなく春日新九郎だ。
ああ、人は昔に変らぬ新九郎だが、兄重蔵の一死に迷夢を醒まして、江戸愛宕下の松平家を去ってここに三年、人知れぬ密林の切磋琢磨に剣の妙髄を工夫し、女滝男滝の水に打たれて禁慾苦行の難道に、いまほとんどその相貌さえ変り果て、昔の寮の御方を悩ませた、あの水々しい美男の面影はいずこにかある。
「対手も音に響いた鐘巻自斎、逃げることもありますめえが、何しろ、一刻も早くおいでなせえ」