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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

が、そう思うしりから、あすの問題がもう眼の前に迫つているのを感じないわけにいかなかつた。

残されたわずかな持物は、もう二人の生活を長く支えるに足りないことはわかつている。急転直下という言葉がじつによくあてはまる今の境遇を、彼女は、自ら求めたものと観念していた。それだけに、たとえ裸で路傍に立つとしても、なにかさわやかなものが胸のなかをかすめていた。

それにしても、日一日と手もとは苦しくなつていつた。これだけはと思う衣類もついに手ばなした。身につける飾り物などはなにひとつ残つていない。こうなるまでに、なにか手内職でもと思わぬではなかつたが、ついふんぎりがつきかねた。やればなんだつてできると思う、そんな自信みたいなものが、いざ何かをという選択を迷わせた。三度の食事にことを欠くようになつた。もうこうしてはいられないと気がついた時は、村費のなにがしを払う余裕も手もとにない有様だつた。

これで東京にでもいれば、と、彼女は思うのである。万一の場合も考えて、ミシンだけはまだ売らずにあつた。そのミシンの仕事さえ、こんないなかではあるかないかわからない。と言つて、それ以外になにがあるか? なんでもいゝから当つてみないことにはと、やつと腰をあげた彼女は、I市の目抜きの通りを、行きつもどりつした。