Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
二
あいネズは彼女の好みの色である。
さて、康子が十畳の間へ足を踏み込んだ瞬間に、こつちでは、二人の女が眼と眼で合図をした。
と、その時、ピヤノの前に立つた康子は、くるりと後ろを振り返つた。
「あ、そう、そう、あたくしこのピヤノ売る決心しましたの。買手がもうぼつ/\押しかけて来るかも知れませんわ」
視線を交したまゝ、しゆうとと義妹とは、息を殺している。
「まさかと思つたら、もう今朝の新聞に、ちやんと広告が出てるんですつて……家じや「信毎」はとつてないから……」
「あんたが出したのかい? 新聞広告なんぞ……」
非難するというよりも、ガッカリしたというような調子で、しゆうとは口を切つた。
「直接じやないんですけれど……あたくしね、そのことで、ちよつと池内先生にご相談してみましたの」
二
池内先生というのは、I市に開業している小児科兼内科医で、現にいま部屋を借りている池内家の近親に当り、東京からの疎開先をあれこれ思い悩んでいた矢先、日頃懇意にしているO博士が、その弟子筋の池内に頼んで適当な家を探させようと言つてくれたのが、そも/\此処へ落ちつく動機になつたのである。