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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

「あら、うれしい。インド・リンゴなんてずいぶん久しぶりだわ。それに、玉ネギ、ほしくつて、ほしくつて……」

と、彼女は、ほんとうにうれしそうに礼を云つた。それはお世辞でもなんでもなかつた。しかし、だれもこういうことをしないこの土地で、この青年の心づかいは、ひとしお彼女の身にしみたのである。

「いまね、北原先生からのお手紙を読んでたところなの。さつきお話をきいたばかりでしよう。あたしのところへ長い長いお便りよ。女同士だからいろんなこと書いてある、書いてある。おみせしてもいゝけど、まあよしとくわ。ね、先生にわるいから……」

康子は、すこしはしやいで、そんなことを言いながら、奥から座布団をもちだし、

「あがつていたゞかないわ。まあ、ちよつとこゝへおかけになつてよ。お茶でもいれましよう」

また奥へ引込むのを、市ノ瀬牧人は、

「いゝえ、わし、これで失礼します。ほかへまわるところがあるもんで……」

「そう、じや、お茶はこんどのことにして、……またお話しにいらつしやいよ。北原先生のおところがはつきりわかつたら教えてちようだい」

市ノ瀬牧人を帰してしまつて、康子は、ことによると、もつと話して行きたかつたのではなかろうかと思つた。