Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
あれからずつと、みなさまお元気でいらつしやいますか。いつの間にか春になつてしまいました。もうその春も過ぎようとしておりますのに、わたくしの生活には、いまもつて光りがさしません。それどころではございません。ほんのわずかに見えていた光りのひとすじが、いま、まつたく消えうせてしまいました。あの人はいよ/\戦犯容疑者として法廷に引き出されることになつたようでございます。新聞の記事がそれをはつきり伝えております。無罪になることがあると言つてくれるひともございますけれど、それこそ当てのない望みで、じつさいに罪がなければ、一応の取調べで裁判までにはならぬという話が、ほんとうのように思われます。
わたくしは、これまで、あの人だけは大丈夫だと信じておりました。あの人のどこを信じていたのでしよう。さあ、そうなると、もうわからなくなるのです。この人がと思うようなひとが、ほんとに意外なことをしているのですもの。男というものは、どうして、そんなにいろ/\な面をもつているのでしよう。でも、女は信じる以外に生きる道はございません。
十一
彼女は書きつゞける――
奥さま、ほんとにわたくしはどうしたらよろしいのでしよう?