Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
もう、この土地にいる必要もなくなりました。旅費でもすこしたまつたら、どこか大都会へ出て、女にどれだけのことができるかを試してみとうございます。
こういう言い方は、自暴自棄みたいに聞えますでしようか? いくぶんそんな気持もないではございませんけれども、しかし、こうして奥様に手紙をさしあげるわたくしをごらんになれば、やつぱり、美しいものを美しいとし、愛するものからは愛されたいという人間の本性は失つていないことがおわかりになるとぞんじます。
この手紙を書きはじめました時の気持と、いま、こゝまで書いて来て、さて、自分をふり返つてみての気持との間には、まつたく、夜と昼とのような違いがあることに気がつきました。奥さまは、なんという方でしようか? あゝ、もう一度あのお声で、わたくしの名を呼んでいたゞきたい、なんて、甘えたことを申してすみません。
伊那谷の新緑が眼の底にうかびます。モトムさまは、もう三年生、お父さまがおそばにいてくだされば、どんなことがあつてもご安心ね、と、わたくしは、申しあげとうございます。では、これぐらいで……。
うしろ影
一
市ノ瀬牧人の道案内で、井出康子はむすこのモトムをつれて、きよう、ワラビ狩りに出かけて来た。