Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
それも、あちこちにブロンズや大理石の首がおいてあり、未完成の塑像が片すみにおしやられているだけで、アトリエのぬしは彫刻をやるのだということがわかる。
そういえば、こゝに集つている連中は、みな同類かといえばそうでもなく、第一に、いまビール・ビンを二本両手にさげてはいつて来たのは、例の尾関昇であつて、これは美術とは関係のない一会社員である。また、さつきから、中二階の手すりへもたれかゝり、学生服を着た男と話しこんでいるのは、これは、北原ミユキで、女といえば彼女をまじえてたつた四人ではあるが、彼女は、いつたい、なぜこんな場所に姿をあらわしたのか?
日が暮れて、もうよほどになる。夏の夜風が雨あがりの湿気をふくんで窓から流れこむ。このあたりは、東京から一時間という郊外電車の沿線で、数十年前に植林を切りひらいた分譲地であるが、住宅はまだ建ちそろわず、道路だけは広く縦横に通じているけれども、そここゝの空地は草のしげるにまかせて、林間都市という名前とはおよそ遠いおもむきのものである。
「もう、これでおしまい……。一本はだ賃におれが飲む」
尾関はそう言つて、左右からのびる手へその一本を渡した。